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特別対談 同志社校友会・ダイキン工業株式会社井上礼之会長×同志社大学松岡敬学長
同志社中学校、同志社高校を経て、1957年同志社大学経済学部を卒業。同年、大阪金属工業株式会社(現:ダイキン工業株式会社)入社。1994年代表取締役社長就任。2002年代表取締役会長兼CEO就任。2014年取締役会長兼グローバルグループ代表執行役員。社長就任までは、人事部長、人事担当役員として、組織風土の構築に深く関わってきた。
同志社大学松岡敬学長 1979年同志社大学工学部卒業。1984年同工学研究科博士後期課程単位取得退学。1987年工学博士(同志社大学)。1984年近畿大学工学部助手。1993年同志社大学工学部助教授。1996年サリー大学材料工学科客員研究員。1998年同志社大学理工学部教授。同医工学研究センター長、同理工学部長、同副学長を経て、2016年4月より現職。

建学の精神を起点に世界を牽引する大学を創出

松岡
1875年に同志社英学校を開校し、「良心を手腕に運用する人物」の養成を建学の精神に掲げた創立者・新島襄は、自らが思い描く大学を実現するためには200年の歳月を要すると語りました。2025年に迎える創立150周年は次の50年に向けての通過点ではありますが、きわめて大きな節目の時です。これを機に私たちは脈々と受け継がれてきた「志」の原点に立ち返り、「良心教育」を根幹とする3つの教育理念「キリスト教主義」、「自由主義」、「国際主義」による理想の大学の結実に向けて、これからの本学の進むべき行路と挑むべき目標を共有するための新たな基本理念として「同志社大学VISION 2025」を策定しました。学生、教職員、校友が一体となった「ALL DOSHISHA」体制によって積極的に大学改革を推し進め、これからの時代を牽引する「志」ある人物を輩出したいと考えています。
井上
これからの時代に求められる人材については、様々な考え方がありますが、最も重要なのは人間としての卓越性だと思います。つまり、尖った部分のある人。例えば、旺盛な好奇心、際立つ情熱、鋭い感性、傑出した洞察力や先見性などの資質の何れかで他を圧倒する人です。当社は現在145カ国で事業を展開しており、多様な国籍の人々がそれぞれの生活文化、宗教などを背景にした個々の価値観を持っています。日本人が海外で働く時に必要なのは、先に述べた資質を備え、自分の価値観を強く打ち出し、しかも同時に多彩な価値観を善として受け止める寛容性を発揮できる人です。大学で学問や研究を深めることは大切ですが、それ以上に自己の優れた特質を学生生活の中で見出し、国際性を磨いてほしい。そのような方々に入社してもらえれば、その延長線上でさらに次元の高い人材育成が可能になるからです。その観点からも同志社大学で学ぶ海外からの留学生が85カ国・地域、約1,430人(2017年5月1日現在)にも及び、同志社大学の留学プログラムで世界各国に留学した在学生が約1,450人(2017年5月1日現在)に達するという状況は素晴らしいと思います。海外にキャンパスを拡大していくことも大賛成です。
松岡
本学は各自の自発性を促し、その中で自己の個性や資質を見詰め、これを積極的に育み、個々の学びに導くという教育理念を140年余にわたって実践してきました。それは、即ち他の人々を深く理解し、多様な価値観を豊かな寛容性を持って受け入れることでもあります。このような人間教育を起点に、本学はこれまで日本と世界の共生と発展に貢献する有為な人物を輩出してきました。今後、創立150周年、さらに次の50年に向けて、教育改革を推し進める上で、要となるのは、やはりグローバル化だと考えています。これを教育・研究・学生生活などと掛け合わせた時、新たに何が必要であり、何が生まれるのか。既存の枠組みを再考し、融合と連携を試み、可能性を追求することによって、新島襄が目指した理想の大学を創出したいと願っています。

「同志社大学VISION 2025」の一つである「学びのかたちの新展開」では、リーダー養成プログラムや大学院改革などを積極的に提供し、意欲ある学生の能力をさらに伸長したいと思っています。リーダーとはビジネスリーダーだけでなく、学術、研究開発、さらに地域社会のリーダーなども想定しています。それぞれの分野で独自の発想力や卓越した実行力を発揮し、課題を乗り越え、時代を主導できる人材です。大学院改革では各研究科の中の近縁の学問領域の力を結集させ、これによって本学の教育改革の端緒にしたい。「キャンパスライフの質的向上」では、例えばダイバーシティキャンパスにふさわしい寮づくりを行いたい。世界各国・地域の留学生と日本人の学生が活発に交流できる学生寮です。また「『国際主義』の更なる深化」では昨年度からグローバル・リベラルアーツ副専攻を設置しました。これは新島襄の理念を現代において具現化するために、彼が若き日に学んだアーモスト大学のリベラル・アーツを本学の中に新たに取り入れるための取り組みの一環として新設したもので、グローバル化が進展する中で新時代の価値を創出できる人材育成を目指しています。授業は全て英語で行われ、外国人教員または海外の大学で学位を取得した教員が担当しています。少人数で留学生と共に学ぶ対話型授業が特徴で、広い視野と多元的な思考力を養うことができます。海外有力大学のスタディー・アブロード・プログラム拠点(SAPセンター)、アメリカを代表するリベラル・アーツ・カレッジの名門校が多数加盟するAKP同志社留学生センター、アメリカの有力総合大学が数多く参加する京都アメリカ大学コンソーシアム(KCJS)も2009年から設置しています。これらもグローバル化を積極的に推し進める本学ならではの際立つ特色です。

世界と地域を複眼で捉える卓越した「グローカル人材」を

井上
当社の年間売上額は2兆円を超えていますが、その約75%は海外で得ています。約7万人の従業員の内で外国人が占める割合は約80%と圧倒的です。このような現状の中で、外国人の従業員に対しても独自性のある社員教育を行っています。グローバル化の中で日本特有のものを否定するのではなく、積極的に活かしています。アメリカンスタンダードに偏重せず、「人を機軸にした経営」、「長期的な人材育成」、「長期の雇用」、「チームワークの重視」、「忠誠心や帰属意識の強化」などを人材育成の核として非常に重視しています。「長期的な人材育成」や「チームワークの重視」などは欧米の新たなグローバルスタンダードとして普及させてほしいと考えているぐらいです。このような企業指針の一環として、日本ならではの取り組みである、盆踊りを40年以上続けてきました。現在、4〜5カ国で催しています。例えば、アメリカでは約3万人が参加しています。日本の文化をアピールすることによって外国人の親近感が高まるのです。人間の心は国籍をこえて深く結ぶことができることを実感しています。もちろん、企業の説明責任や企業倫理、経営の透明性など欧米に学ぶべきことは積極的に取り入れています。例えば、シリコンバレーの先端企業がプロジェクトチームを組む時は、Aランクの尖った人材のみが集まります。これも日本が見習うべき点だと思います。要するに是々非々なのです。

現在、当社では特に「グローカル人材」を注視しています。「グローカル」とはグローバルとローカルを組み合わせた造語です。世界各国で事業を展開する企業にとって国際社会の第一線で活躍できる世界規模の視野を持ち、各地域の視点で経済や社会の発展に貢献できる人材が非常に重要なのです。それぞれの文化や宗教などを背景にした価値観を深く理解した上で、グローバル化とローカル化を同時に推進できる能力が強く求められています。ですから、例えばアメリカの価値観に精通した人であっても、ヨーロッパでは全く役に立たないということも起きています。世界の多様性を前提とした真の意味でのグローバル化を目指さなければならない時代が目前に来ていると感じています。今後、さらに高度情報化が急伸し、世界各地との距離が縮まるほどローカルの独自性を実感し、それに対応できる人材が必要になってきます。このことを大学の人材教育でも重要視していただきたいと思っています。
松岡
「同志社大学VISION 2025」の中で本学は新たな国際主義の展開として海外拠点の戦略的強化を図るために「同志社大学テュービンゲンEUキャンパス」構想を推進しています。本年4月にドイツのテュービンゲン大学に本学の拠点を開設し、ヨーロッパからの外国人留学生誘致を促進します。本学学生の派遣についてもテュービンゲン大学を中心とした教育・研究プログラムを開発し、展開していきます。インターネットを活用して相互の学生がディスカッションするといった教育プログラムの提供も予定しています。ヨーロッパには伝統を誇り、優れた教育で知られる名門大学が数多くあります。その土壌となる歴史と文化を含めて学ぶべきことは多々あり、アメリカ以上に得るものがあると考えています。創立150周年、さらに次の50年に向けて、ヨーロッパの地域統合体であるEUから本学を発信する拠点を構築するメリットはきわめて大きく、井上会長が重視しておられる次代を担う「グローカル人材」の育成にも貢献できると考えています。

創立者 新島 襄

2ドルの募金から始まった理想への道。
1874年10月9日、アメリカ合衆国バーモント州のグレイス教会で行われた集会。神学校を卒えたばかりの日本人青年が登壇し、「母国にキリスト教の大学を創りたい」と涙ながらに訴えたのです。その赤心の熱き思いは、会衆の心を動かし、「帰りの汽車賃しか持ち合わせていないが、これを使ってください」と2ドルを差し出した老農夫もいました。青年の名は新島襄。その理想への道は、この時拓かれたのです。
井上
振り返れば、私は熱心に勉学に励む良い学生ではなかった。しかし、同志社で中学・高校・大学を過ごすことによって得たものは実に多かった。特にその気風に大きな影響を受けました。禅語に「霧の中を行けば覚えざるに衣湿る」という言葉があります。霧の中を歩いていると、いつの間にか衣服が湿っているように、身を置く環境に感化されるという意味ですが、まさにその通りだったと思います。何よりも自由闊達であることを尊重し、自分の個性と能力を発揮できる人物を育てようとした新島襄の教育理念を感受する中で、自由であることの尊さを実感し、自らを律しながら主体的に考え、自主的に行動することの大切さを学びました。

これらは社会人になり、社長となって会社の舵取りをするのにも、非常に役立っています。私が会社経営で大事にしてきた「人を機軸にした経営」、「フラット&スピード」、「コアマンとサポーター」、「自己責任の重視」なども全て同志社で養った精神と発想を起点に生み出したものです。会社は「命ある人間が集う集団」です。だから、人を機軸として出来る限りフラットであることが望ましい。「コアマンとサポーター」制度では、本来は次長や課長が中心になって仕切ります。しかし、例えば入社してまだ数年の若手でも、仕事を展開する国や地域に詳しいと判断すれば、彼をコアマンに抜擢し、幹部がサポートする場合もあります。自由と責任の観点からタイムカードも廃止しました。今日の積極果敢で退職率の低い会社を創り出すことができたのも、同志社の教えが礎になっています。
松岡
私は同志社大学の学部を経て本学大学院へ進みました。その間に感受した自由闊達な学風は、井上会長と同じように自分の大きな礎になっています。私は研究の世界に入りましたが、恩師に温かく見守られながら自由に研究できることの素晴らしさを、身を以て知りました。このような環境の中で貴重な学びや気づきを得ることができ、考え方も生き方も大きく変化しました。これが本学の際立つ特色であり、この伝統が今日の同志社を創り上げてきたのだと確信しています。

「ALL DOSHISHA」で新島襄が高く掲げた理想を実現

井上
同志社校友会会長の大任を拝して本年で7年目になります。校友会は卒業生約33万人の大所帯です。本部の理事会、5つの専門委員会、国内48支部、海外31支部があります。これまで校友会では、理事会、専門委員会と共に各支部総会、各地域ブロック会、全国支部長会と全国校友の集まりである大懇親会、海外大懇親会を通じて活性化を図り、大学との連携を強化してきました。また、在学生の方々に向けても海外留学とスポーツに関する奨学金制度を始め多彩なサポートを行っています。日本の地域経済を支え、次代を担う人材の育成・確保を目的にしたUターン就職推進のための就職協定支援も高い評価をいただいています。在学生に正しい食生活を促し、学生の交流を図るために開始した100円朝食支援も定着してきました。

「同志社大学VISION 2025」のご説明を受けて非常に頼もしく感じると共に、これによって大学改革を推し進めるためには、「ALL DOSHISHA」体制が不可欠であり、校友会も全力で支援したいと考えています。「ALL DOSHISHA」を掲げる時、真っ先に頭に浮かぶのは建学の精神「良心教育」です。激変の時代だからこそ、より一層重要になってくると思います。また、「ALL DOSHISHA」とは教員・職員・学生に校友会の会員を加えたものです。この拡大を図り、一体化を強化するために、まず試みたいのが卒業生全員のネットワーク化です。同志社人のネットワークを通じて、例えば職域別・地域別・世代別に呼びかけたい。SNSなども積極的に活用すべきです。私自身も会長になるまでは、日々の仕事にかまけて、校友会の活動は疎かになっていました。このような状況の方々も数多くおられるはずです。「同志社大学VISION 2025」が掲げられたことによって、「同志社のために校友が力を結集して支援していこう」という機運が生まれています。この好機を捉えて一気呵成に盤石の体制を構築したいと願っています。また、「同志社大学VISION 2025」を実現するためには、その基金を捻出するための募金活動がぜひとも必要です。校友会として最大限の継続的なご支援をお約束します。
松岡
改めて創立の原点を見詰め直し、これからの世界の中で高く評価される同志社大学の在るべき姿を見極め、これを着実に根づかせていく。これこそが本学が今やらなければならない最も重要なことであると考えています。創立150年の通過点において同志社大学の立ち位置を明確なものにしておきたい。これが学長としての私の決意であり、同志社人の方々にとっても次代への確かな指針になると思います。会長を始め皆々様のお力添えを得て、未来へ向けて「躍動する同志社大学」を創出します。

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