2021.07.17学びのかたちの新展開
7月17日(土)2講時から4講時に「読書から始まる知の探究」服部篤子教授(政策学部)によるセッション(2期生・3期生合同)の第3回学習が対面形式で開催された。
今回の目的は、ナレッジの編集と知の集積による「問いの再構築」である。
2講時:前回のセッションの振り返り
はじめに、2期生と3期生に分かれ、3人グループを作った。第2回学習で本学脳科学研究科の貫名教授と櫻井教授に行ったヒアリング内容の記録を分析し、次につながるキーワードや印象に残った部分が何か発表した。その際、服部教授から「指示を正しく理解していない。」「編集とは、まとめることではない。早くから絞りこむと見誤る。」と強く指摘された。どんな点が印象に残り、何を受け止めたのか、キーワードを見つけ出す作業なのに「認知症の方と共生すべきである」と感想を述べたり、記録を頼りに拙速に内容をまとめたり、一つのテーマに絞って意見を出したからである。後半では「シンプルな共有」を心掛けた。その上で、課題図書『福祉の哲学』と結びつける論点も見られたが、30数名いる塾生たちの印象に残った部分が概ね共通していたことが意外であった。
3講時:大牟田市についての分析
3講時には実際にフィールドワークで訪れる大牟田市が取り組む認知症の支援策について、個人で学んだ内容を発表した。目的は、「大牟田市で何を聞き、学ぶのか」を明確にするためである。各グループで支援策を発表した後、何をしにフィールドワークを行なうのか話し合った。キーワードとなったのは「包括的なコミュニティ」である。大牟田市が認知症の方に対する数々の支援策を実施するには、コミュニティが重要であるという意見が多く挙がったからだ。他の地域と大牟田市の違いは何なのか、誰かの意見をきっかけに別の塾生が発言し、また別の学生が自身で深めた学びを基に更に発言するといった活気溢れるやり取りが何度か見られた。
4講時:まとめ・問いの再構築
4講時には第1回学習で組んだグループに戻り、もう一度最初に立てた「問い」を振り返った。今までの学習を振り返った上で、改善点を話し合った。特に3講時でキーワードとなった「コミュニティ」を用いて、コミュニティの利点や問題点、大牟田市とも関連した「問い」を作り直した。
総括
今回は今まで学んできたことを基に「問い」を練り直す作業が中心であった。いよいよ8月12日に大牟田市でフィールドワークを行なうが、ある塾生から「問いを立て直す作業中、自分がどの立場で考えているのかわからなくなる時があった。課題図書の内容が整理できていないからだと思うので、これまでの学習で得た知識を整理してフィールドワークに臨みたい。」という感想があった。もう一度各自が大牟田市について調べ直し、「問い」を磨く必要がある。
最後に、服部教授から「データで見えるものと現地で見えるものが同じなのか、それとも違うのかよく見て欲しい。フィールドに行くまでに“根本的な”問いをもう一度各自が立て直し、根拠を持って自分の意見を言える状態でフィールドワークに臨みましょう。」「フィールドワークによって、もしかしたら何かが変わるかもしれないし、変わらないかもしれない。フィールドワークを終えた後、皆さんがどうしたいと思うのか楽しみにしています。」という締めくくりで第3回活動を終えた。
【紹介された参考図書】
『認知症とともにあたりまえに生きていく』、矢吹 知之他、中央法規出版、2021年
(事務局・高等研究教育院事務室)