2023.11.15創造と共同による研究力の向上
「この壁紙が好きだから同じものを使いたい」「前の家と似た壁紙を使いたい」このようなお客様の希望を叶えるため、既存の壁紙のメーカーと型番を特定する作業が内装の新築工事やリフォームを行う際に必要となります。これらの作業は長らく、壁紙メーカー毎に作られた壁紙のカタログを何冊も現地に持ち込み、一枚一枚サンプルと壁紙を照らし合わせて特定するといった地道な手作業で行われてきました。
この度、コマツ株式会社(本社:大阪府東大阪市、代表取締役:小松 智)と、同志社大学 理工学部 知的機構研究室(奥田 正浩 教授)との産学連携により開発された「自動テクスチャ識別プログラム」を搭載した、壁紙AI識別アプリ『かべぴた』が開発され、リリースが決定しました。『かべぴた』は建設業界において長らくの課題であった長時間作業から解放するDX(Digital Transformation)の好事例となるとともに、産学連携のモデルケースとなる画期的な製品です。
また、この『かべぴた』は壁紙識別に特化した商品ですが、そのコア技術である画像識別AIモデルは、建築資材以外にも応用可能なものであり、新たな可能性を秘めたものです。この技術については『2022 IEEE 11th Global Conference on Consumer Electronics』で発表を行い、「自動テクスチャ識別プログラム」については、コマツ株式会社と同志社大学での共同出願(特許出願番号:特願2023-150356)を行っています。
同志社大学理工学部・奥田教授の研究チームは独自の機械学習アルゴリズムを用いた、微細なテクスチャの差異に基づく画像識別システムについて研究しています。今回コマツ株式会社と共同で、本技術を応用した壁紙識別アプリをリリースすることとなりました。建築業界では、長い間、施工後の材料のメーカーや品番を特定する作業には、多くの物理的なカタログを用いて、施工材料と比較するという手段が取られてきました。このような方法では、一つの不明な材料の品番を特定するのに2、3時間かかることも少なくありません。さらに、微細なテクスチャの違いによって壁紙を識別するのは、熟練した専門家でさえも困難であり、それが大きな課題とされています(図1を参照)。今回の研究で開発されたシステムは、これらの問題をスマートフォン1台、わずか数秒で解消する高精度で高速な識別システムです。
テクスチャ識別は機械学習研究では伝統的なテーマですが、模様の差異が僅かであるような壁紙などの対象物の識別は困難な問題でした。また、今回の対象である壁紙の場合、識別の精度は照明の強度や角度に大きく依存し、さらには照明の色によっても精度が変動します(図2を参照)。これに対処するため、より環境に頑健な識別システムが求められていました。
当該研究チームは独自の手法で大規模なデータセットを作成し、高精度に型番識別を可能にする手法を開発しました。この新しいアプローチは、業界の長い間の課題を解決するだけでなく、微細なテクスチャ識別の新しいフレームワークを提供します。
今回のアプリは壁紙の識別に特化していますが、その中核となる技術は、微細なテクスチャの差異を高精度で識別できる汎用性の高いAIモデルです。今後は、建築資材を対象とするだけでなく、広い分野での応用を検討しています。
タイトル | Wallpaper Dataset for Image Classification. |
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発表 | 2022 IEEE 11th Global Conference on Consumer Electronics (GCCE) |
DOI | 10.1109/GCCE56475.2022.10014404 |
壁紙AI識別アプリ『かべぴた』のリリースに合わせまして、コマツ株式会社と共同で新商品発表会を開催いたします。奥田教授による識別モデルの技術的な解説や、『かべぴた』のデモンストレーション展示を行います。メディアの方で取材をご希望の方は、同志社大学リエゾンオフィスまでご連絡ください。
日時 | 2023年12月15日(金) 商品発表会 15:00~16:30 懇親会 17:00~19:00 |
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場所 | THE GARDEN ORIENTAL OSAKA(ザ・ガーデンオリエンタル・大阪)1階 THE BALL ROOM 〒534-0026 大阪府大阪市都島区網島町10-35 |
知的機構研究室(奥田正浩教授)
信号処理と機械学習(AI)を専門としており、Sparse Codingなどの数理手法を活用して、画像の理解や時系列データ解析などの研究を行っている。特に近年は、AIを用いたハイパースペクトル画像(3次元データ)の理解・処理、さらにはデータ化が難しいとされる画像の色合い・雰囲気・魅力を量化して解析する研究に注力している。また、ディープニューラルネットワークが持つ潜在バイアス(例えば、細部の特徴をより重視するといった“癖”のようなもの)に関する研究も行っており、その潜在バイアスがなぜ生じるのか、また潜在バイアスを活用した識別精度の向上についても研究している。
関連情報
研究に関するお問合せ
同志社大学 理工学部 インテリジェント情報工学科 知的機構研究室
教授 奥田正浩
E-mail:masokuda@mail.doshisha.ac.jp
商品発表会・産学連携に関するお問合せ
同志社大学リエゾンオフィス
TEL:0774-65-6223
E-mail:jt-liais@mail.doshisha.ac.jp
取材に関するお問い合わせ
同志社大学広報部広報課
TEL:075-251-3120
E-mail:ji-koho@mail.doshisha.ac.jp