同志社大学 の 新たな英語教育
2022年度から、これまで受け継がれた英語教育の伝統をさらに発展させ、多様化する学生のニーズにフレキシブルに対応し、自律した外国語学習者を育てるべく、新たな英語のカリキュラムをスタートしました。
新カリキュラムは、本学の教育理念に基づき、ヨーロッパ言語参照枠(CEFR: Common European Framework of Reference for Languages)及びヨーロッパ言語ポートフォリオ(ELP: European Language Portfolio)における外国語の学習・教授・評価に関する考え方を参照し、編成しています。
新カリキュラムの4つの特長
1 英語で専門領域を 学ぶための体系的な科目構成
1・2年次において英語で専門領域を学ぶための基盤づくりを行う体系的な科目構成となっています。
1年次では英語学習の基盤づくりを目的とした英語科目を履修します。
2年次では分野(文系・理系)を横断して共通に求められる英語力と各領域(人文・社会・理工)で求められる英語力への基盤づくりを目的としています。
2 習熟度別クラス編成 の拡充
入学前に受験するプレイスメントテストの結果により、これまでは3つのレベルに分け、1年次で履修する科目について習熟度別のクラス編成を行ってきましたが、新カリキュラムではレベル分けを4つへ変更し、2年次で履修する科目にまで習熟度別クラス編成の対象を拡充しています。
3 習熟度の各レベルに 応じた科目の履修
これまでは全レベルの学生が同一の到達目標のもと、同一の科目を履修していましたが、英語の運用能力や学修目標の多様化に対応するため、習熟度別のレベルごとに到達目標を設定した科目を設置し、学生はレベルに応じた科目を履修します。
4 少人数 クラス体制
習熟度別の4つのレベルで履修する全ての科目において、少人数クラス体制を実現しています。
そのことで、創立者新島襄から受け継がれた「人一人は大切なり」、つまり学生一人ひとりの個性と人格を尊重する教育にもつながる、多様化する英語の運用能力や学修目標に対応しやすい環境がさらに整備されました。
意欲ある学生、レベルアップを目指す学生に向けた上級科目(職業として英語を使用することを想定した科目、大学院進学など学術的な分野で英語を使用することを想定した科目)、留学に必要となるTOEFL®︎テストやIELTS™️対策を主として行う留学準備科目、海外留学プログラムも提供する深みと幅のあるカリキュラムとしています。
4年間の学習イメージ
レベルに応じた到達目標の設定
同じ到達目標の同じ科目を全員が履修する仕組みではなく、個々のレベルに応じた到達目標を設定した科目を履修する仕組みになっており、右記の通り、レベル毎に、CEFRに準じた到達目標を設定しています。
入学前
入学前にプレイスメントテスト(本学ではCASECを採用しています)を受験します。
その結果に基づき、英語能力の高い順からHigh Intermediate Intermediate Pre-Intermediate Basic の4つのレベルに分けたクラス編成を行います。
1・2年次
所属する学部・学科により卒業に必要な英語の単位数は異なりますが、多くの学部・学科が8単位の取得を卒業要件としています。
この8単位を2年次まで、つまり入学後2年間で履修できるよう英語科目のカリキュラムを編成しており、2年次までの英語科目全てにおいて習熟度別のクラス編成を行います。
1・2年次で学ぶ科目は、英語で専門領域を学ぶための体系的な科目構成になっています。
1年次:英語学習の基盤づくり
2年次:文系・理系を横断して共通に求められる英語力、人文・社会・理工の各領域で求められる英語力の基盤づくり
それぞれのレベルで履修する科目は以下の通りです。なお、途中でレベルアップも可能な仕組みになっています。
(※)「レベル:Basic」の学生は2年次に「レベル:Pre-Intermediate」の1年次科目を履修します。
英語力を伸ばすために
英語のカリキュラムには、他にも上級科目、留学準備科目、海外留学プログラムがあり、一人ひとりの目標に応じて履修することが可能です。
上級科目は、英語を職業として使う領域で求められる英語力を育成する科目や、学会での論文発表や大学院進学等を目指した学生向けのアカデミックな領域で求められる英語力を育成する科目があります。
留学準備科目は、TOEFL®︎テストやIELTS™️といった留学に必要なテストのスコアアップとともに、留学先での学習シミュレーションを通して、4技能の英語力の向上を目指した科目もあります。これらは1年次から履修可能です。
海外留学プログラムは、地域、期間ともに多様で、夏期、春期の休暇期間中に1ヶ月程度の留学を行う「サマープログラム 」「スプリングプログラム 」、秋学期の大学の講義期間中に4ヶ月程度の留学を行う「セメスタープログラム 」があります。
英語カリキュラムの全体像
英語新カリキュラムの全体の科目構成、及びCEFRレベルの目安
下記のCEFRレベルはあくまで目安です。また、科目登録時のレベルの目安を示したもので、科目履修後のレベルの目安を示したものではありません。
各科目の詳細はこちら を確認してください。
「英語を学ぶ」から 「英語で学ぶ」へ
英語力の基盤づくりができれば、「英語を学ぶ」から「英語で学ぶ」にステップアップし、将来を見据えてさらに英語力を伸ばしていきましょう。
以下の通り、様々な選択肢があります。一人ひとりの将来の目標に応じて、積極的にチャレンジしてください。
※TOEFLはエデュケーショナル・テスティング・サービス(ETS)の登録商標です。
英語教育改革に かける思い
英語新カリキュラムのスタートに向けた特別企画として座談会を2021年8月に実施し、新カリキュラムを検討したワーキンググループの代表の先生、文系・理系の学部の先生方、本学のグローバル化を牽引する国際センターの所長、教養科目を所管する全学共通教養教育センターの所長、そして学長にそれぞれの立場から新カリキュラムを通じた大学の将来像、人材育成について語っていただきました。
今回の改革について私が特に注目しているのは、英語で専門領域を学ぶための体系的な科目構成です。基礎力を築いた上で体系的に知識・知見を積み重ねていくことは、学究の世界で何より重要です。また本学には、米国名門リベラルアーツカレッジが加盟するAKPや、米国一流大学で組織される京都アメリカ大学コンソーシアム(KCJS)などが日本センターを設置しています。そこで提供される科目を学ぶなど、本学を取り巻く英語教育環境も大いに活用していただきたいと思います。 同志社の創始者新島襄は「人一人ハ大切ナリ」という言葉を遺しました。良心に基づき、自分と異なる価値観を持つ他者を理解できる、真に自立した人物の養成が本学の教育目標です。英語力は、そのためのダイバーシティ推進を支える重要な手段です。同志社の新しい英語教育を体感し、地の塩、世の光となるような人物として、将来は世界各地で活躍していただきたいと願っています。
新カリキュラムでは国際基準の習熟度別教育ガイドラインなどを導入して、自ら行動し、異なる価値観を受け入れながら社会に貢献できる人物の養成を目指しています。さまざまな状況を想定した授業を通じて、英語で自己表現をしながら相手を理解し、意思疎通のできる力が涵養されることを期待しています。習熟度によるレベル分けは従来の3段階から4段階に増えました。これにより、英語力が高い学生は積極的に能力を伸ばし、英語が得意ではない学生も達成感が得られるような、きめ細かい指導が可能になります。英語の運用能力に優れた大学院生や外国人留学生を窓口として学習支援を行う、アドバイジング制度の導入も検討中です。効果を得やすい学び方は人によって異なるはずです。助言を受けながら自分の学びを振り返り、自律した学習者になれれば、学びはもっと楽しくなることでしょう。また各学部の専門性・方向性への対応など、今後も改変を継続的に行なっていく予定です。
日本の法律・政治は、外国の制度や社会との比較対照を通じて発展してきました。現代社会でも、この分野は外国や英語との関係が深く、社会で活躍する法学部の卒業生達も現場での英語の必要性によく言及しています。そのようなこともあり法学部生の留学志向は強く、法学部では独自のダブルディグリープログラムや海外インターンシップなどを実施しています。法学部では文献講読や英語で法律制度を学ぶグローバル科目、英語による外部コンペティションへの参加などを通じて、法律分野における英語力の育成に力を入れてきました。新カリキュラムはこれらの取り組みを後押ししてくれるものと期待しています。英語は新しい学びの窓を多面的に提供し、視野を広げてくれます。たとえ英語が得意ではなくても、新カリキュラムで自律的に学んで英語の運用能力の向上に努めましょう。そして社会に出て英語に直面したときに壁を感じない人になっていただきたいと願っています。
理工系は学部卒業後、就職してエンジニアになっても大学院に進学しても、すぐに英語が必要になる分野です。そこで理工学部では「Academic English for Science」という科目を設置しています。実験や科学論文執筆などの学習をすべて英語で行う授業で、多くの学生が履修しています。 今回のカリキュラム改編により、学部や個人のレベルに応じた英語力の基盤づくりがさらに進むものと期待しています。そして英語への関心を高めた学生には、海外の13校(2021年12月1日現在)と協定を結んでいるダブルディグリープログラムなどの留学に、ぜひ挑戦していただきたい。理系の留学は、必修科目や実験が多いために簡単ではありませんが、ダブルディグリーにはこれまで生命医科学部の学生も合わせて約40名がチャレンジしています。海外の有名大学で専門分野を深める経験は必ずプラスになるとともに、英語を通じて培ったコミュニケーション力は人間形成においても貴重な財産となるでしょう。
新型コロナウイルスのパンデミックにより、全国の大学では留学事業や国際化活動が大きな影響を受けました。その中にあっても本学はICTを活用した新たな国際連携教育手法COIL(Collaborative Online International Learning)を導入。昨秋には派遣留学を再開するなど、再び積極的な国際化に取り組んでいます。 本学には37カ国・地域に及ぶ175大学と提携した留学プログラムがあります。中でも特に英語圏のトップ校では高度な語学力が要求されます。今回の改革によって、各自の能力に応じた、さらにきめ細かい英語教育が可能になりました。学生の皆さんには新カリキュラムで存分に学んでいただき、海外難関校への挑戦を含めた留学や、本学で学ぶ外国人留学生との交流をますます活発に行っていただきたい。そして本学が、多様なバックグラウンドを持つ学生が集う、活気あふれるダイバーシティキャンパスになることを願っています。
本学には「グローバル・リベラルアーツ副専攻英語開講科目」という英語で授業を行い、外国人留学生と共に学ぶ教養科目があります。人文科学、社会科学、自然科学という幅広い学問分野や日本の伝統文化などについて、日本人学生と外国人留学生が英語で共に学ぶものです。外国人留学生が加わることによって異なる文化や価値観を持つ人とのコミュニケーションが深められるほか、留学準備あるいは留学後の英語力の維持を目的に履修する学生も多くいます。また本学には、ハーバード大学やイェール大学の学生が日本の文化・社会を学ぶStudy Abroad Programがあり、本学の学生も出席が可能です。新カリキュラムによってさらに英語力を向上させ、これらの科目やプログラ
ムに参加する学生が増えることを期待しています。ただし英語はあくまでもツールの一つであり、言語間に優劣はありません。英語以外の外国語についても意欲的に学び、多様化する社会のニーズに応えて活躍できる人になっていただきたいと思います。
座談会の様子はこちらでチェック!
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